Netflixアニメ『Levius』を見た話

 Netflix配信のアニメ『Levius』を見ました。何を隠そう原作漫画の大ファンで、何かしらの形で映像化してくれないかな……とずっと願っていたので、まさしく文字通り私に取っては念願のアニメ化!

 しかし、オールポリゴンの3Dアニメというのは私の中で馴染みが薄く、どう言ったものになるのか期待半分不安半分と言ったところだったのも事実。

しかし実際見てみると

 

こ、これはすごい!!!

 

そんな不安を抱いていた自分が

「なんて愚かな考えであったんだ!!」

と思えてしまうほどの渾身の出来でありました。特に序盤2話程のプロローグ的な話から進み本格的な試合の話になってからの話の内容の加速と熱量が半端ない!!!

 

 

 『Levius』は人体と機械を融合させて戦う"機関拳闘"と言う格闘技が存在する世界。その機関拳闘を通じてそれぞれ成長をしていく登場人物達の物語。スチームパンクの世界観と原作者の中田先生の圧倒的画力に目を引かれますが、内容は拳と拳で語り合う戦士達の血湧き肉躍る熱い物語です。

 

 アニメは原作準拠ではなく、中田先生の意向により

「面白くなるのであれば原作と設定やストーリーを変えて良い」

との意向の元作られているので原作とちょこちょこキャラクター設定やストーリーの細かい流れが変更されています。しかし、それが非常に良い巻き取り方をしていて、変更したことにより原作漫画とは違うドラマチックさを出していると思うのです。

 

 まずは、原作では追っかけ女房的なポジションであるナタリア。しかし、アニメではレビウスをライバル視してザックジムまで彼を追いかけ無理矢理ナタリア自身も所属する言う存在に。追っかけ女房といえば追っかけ女房的なのですが、最初にレビウスやザックに対する親密度や好意が無い分、その後レビウスやザックが暮らす家に居候をし、彼らと生活もトレーニングも共にするようになってから徐々に心理的な距離感が近づきナタリアもレビウス達も互いを互いに"家族"として受け入れいく過程の描き方が非常に丁寧に描かれているのです。ナタリアは序盤から話に登場しているので、話を通しての心情の変化や成長の描写も同様の印象を受けました。特に終盤近くにレビウスの祖母が闘技場へ向かう途中にナタリアと鉢合わせするエピソードが私は堪らなく好きです。ナタリアがレビウス達の"家族"であると認識して前を向く名シーンだと思うのです。

 

 マルコムの話ととても素晴らしいと思うのです。何故戦うのか? 何を抱えているのか? と彼のバックボーンを掘り下げることでキャラクターがより明確に鮮やかに見えてきてドラマチックな展開になっています。娘の回想を本編で挿入しつつ、最後に現在の娘が出てくるシーンも涙無しには見られません。

 

 想いを抱え、レビウスが想いを背負うと言う点ではヒューゴも同様です。ビッグマウスで不遜で不敵なヒューゴ。しかしその実強いだけではなく魅せる格闘を弁えており、漢気あふれる選手。A.J.に倒されてしまい、まだリング上での闘いは叶っていません。しかし、文字通り『完膚なきまでやられた』原作とは違い、その先の希望を確実に感じさせる描写で胸に熱いものが込み上げてきます。

 個人的にはこのヒューゴの声優に小野大輔さんが起用されていて、粗暴だが漢気溢れる演技が聞けるのもポイントが高いところです。

 

 そして、やはり最も特筆すべきはA.J.とクラウンであると思うのです。クラウンはA.J.を養父として育てており同時に自らの美意識や欲望の為にA.J.を利用しており、A.J.は意識操作をされてクラウンに従っている。

 ……実際に言葉にしてしまえばその通りなのですが、果たしてこの2人の間は本当にそう言ったビジネスライクな偽物の親子関係であったのだろうか? と思ってしまいます。

 原作と1番異なる印象を受けたのがこの2人でした。原作のクラウンはもっとクレイジーな印象ですし、完全にA.J.は弱みを握られ自分の意思の下故意に利用される道を選んでいます。2人の間には利用する者・される者以外の関係は何もありません。

 しかし、アニメのクラウンとA.J.は少し違う印象を受けたのです。正直関係性としては原作より歪だと感じてしまいます。しかし、歪んだ形だっだとは言え、深層心理下では逃れたいとA.J.が願っていたとは言え、その中でもお互いが"家族"として心通う瞬間があったのではないか? とそう思わせてしまうのです。とても不思議な関係。一筋縄では行かないとも。しかし、この2人の歪で不可思議な関係がアニメの『Levius』にグラデーションを与えていると感じたのも事実です。

 

 

 レビウスが機関拳闘で闘えば闘う程、己の想いだけでなく周囲の想いや敗者の想いがレビウスの肩にかかってきます。故に彼は闘い続けるのです。それは原作の漫画でもアニメでも一貫して描かれていることだと思います。

 しかし、同時にアニメではそれだけでなくそれぞれの登場人物の"家族"の形、想い、絆を描いているように感じました。リングに上がっていても、上がっていなくとも誰もが誰かを想い、その想いや己の想いを背負い、何かと闘っている。

 

 原作とアニメの受けた印象の差異についての感想のようになってしまいましたが、とにかくよく出来ている面白いアニメです。見た時に「おっ!?」と耳を引くほど音楽も抜群に良いし、アクションシーンは手に汗握ります。個人的にはA.J.の招待がわからない時に、顔は見えないけれど、ラインや動きがとても女性的な滑らかさや繊細さでありながら、人外の如く動くアクションがめちゃくちゃ好きです。

(原作だと顔が見えるまで性別がわからない感じもとても好きなのですが)

 そして、EDの中田先生の描き下ろしのイラストの数々が華を添えていてまた素晴らしいのです。

 

 いちファンの戯言だと思わず興味があれば『Levius』のアニメを是非見て欲しいです。アニメだけ観るも良し。アニメから漫画を読んで違いを味わうも良し。きっと観た後に胸に灯るものがあると思います。