【観劇感想】『四月は君の嘘』

 

四月は君の嘘」観劇してきました。

アニメや原作は物凄く評判が良くて、興味はずっとあったのですが、まさか最初に拝見するのが舞台になるとは思いませんでした。

(私こういうのばかりですね…)

 

「漫画読んだことあるから知ってるよ!」という方も多いと思いますが、まずは公式サイトからのあらすじを失礼します。


『ヒューマンメトロノームとも揶揄された正確無比なピアノ演奏』
『幼少から数多くのコンクール優勝』
そんな過去を持つ天才ピアニスト有馬公生は
母親の死をきっかけにピアノの音が聞こえなくなり
演奏から遠ざかっていた。
公生を心配する幼馴染みの澤部椿や渡亮太と学生生活を送り
新学期になった四月———
公生は同じ年のヴァイオリニスト宮園かをりと出会う。
かをりとの日々はモノクロの心をカラフルに色付け公生の世界を変えてゆく。
ある日、かをりはヴァイオリンコンクールのピアノ伴奏に公生を指名。
再び鍵盤に触れたことで公生の中に新たな感情が芽生える。
友人、ライバル、恩師と過ごす春夏秋冬は
美しくも切ない嘘の物語を紡ぎ出す。

「もうすぐ春が来る、君と出会った春が来る。

 

 

観劇を決めた理由は私の二大好きな舞台の一つである『Club SLAZY』の演出と脚本をされている三浦香さんと伊勢直弘さんのタッグの作品だったから。そして、演奏シーンは生演奏!というのにつられて観劇を決めた訳です。

 

今回は三浦さんが脚本・伊勢さんが演出というSLAZYとは逆の組み合わせでしたが、三浦さんの叙情的な脚本の雰囲気が『四月は君の嘘』の世界観にとてもマッチしており、内容も恐らく端折ってはいるのだと思いますが、演奏シーンや話の見せ場を盛り込んだ中話を知らなくてもストーリーを消化出来たので、かなり丁寧に2時間で纏まっている印象でした。舞台装置もピアノを模した階段や五線譜を模したカーテンと工夫が凝らされていて、とにかく舞台も音楽も内容も綺麗な舞台だったな…という印象です。

 

出演俳優さんの強さ

 

安西慎太郎さんと和田雅成さん。

このスター級の2人がこの舞台を牽引したと行っても過言ではないと思います。

 

まず今回の1番の感想は

安西慎太郎推せてしまうやないかーい!!!

です(笑)

安西さん。何度か舞台で拝見したことがあるんですけど、毎回拝見する度に様々な魅力を発見して

「….推せる…!」

となるんですが、今回も多分に漏れず

「…推せる…!!」

となるのでした。

 

とにかく声が良い。あと、ちょっと繊細な内面を表出させる演技が凄く上手い。今回の公生や、私が以前見た『男水!』の礼央はタイプは違えど腹にいちもつ抱えてるタイプの役なんですけど、その内面が見えてくる演技が本当に上手いんですよ。凄く心を揺さぶられて目が離せなくなるというか…。演技で「目が離せない」というような人の惹きつけ方をする俳優さんってなかなかいないと思うので、機会があれば安西くんも色んなタイプの役を拝見してみたいです。

あと今回の公生はメガネが似合ってて最高オブ最高でした。(個人趣味ですが…)

 

和田くんは本当に華がある俳優さん。顔の格好良さとかではないのですが、舞台に立ってるだけで目を惹く。佇まいだけで華やかなオーラがある。和田くんはどちらかというとカメレオンタイプの俳優というより、自分と役を擦り合わせて落とし込むタイプの俳優さんなんだろうなあ…と思っているのですが、どの役も”和田雅成としての演技”を魅せてきて凄いなあ…と思います。

 

そして脇を固める大人役の人々の演技力の強さよ…!みかしゅんさんや小玉さん、そして田中さんは本当素晴らしかったです。大人役が大人だと(わかりづらい表現ですが)安心して世界に入れます。

 

松永さんや河内さんの女の子役の方々もとても可愛くて魅力的だったんですが、2人とも感情が高ぶる演技の声がキャンキャン聞こえてしまったのがちょっと残念だったなあ…

 

生演奏という強さ

 

これ。これですよ。この舞台の魅力をさらに引き上げたのは生演奏であり、プレイヤーさんは今回の影の主役だと思っています。

ピアニストとヴァイオリニストはそれぞれ芸大卒の一流プレイヤー。特にピアニストの方は劇中に出てくる登場人物ごとに弾き方のタッチを変えたり、公生が精神的に追い込まれてピアノが弾けなくなる様を表現したりととにかく凄い。コンクールを1人3役別のタッチで演奏したのと、かをり不在のガラコンサートのピアノの表現は当に圧巻。しかも映画やアニメと違い毎回生演奏なので、演技ばりの生きた演奏が聴けてしまう贅沢さに賞賛しかありません。

 

今回のピアニストを務めている松村さんは尺八奏者もされているらしく、折込のチラシに尺八奏者としてのコンサートのチラシが入っていたのはまた別の意味で印象深かったです。

 

最後に個人的な意見なのですが、

さよならソルシエ」もそうなのですが、いわゆる”フラワーコミックス”系の少女漫画の舞台化って作品のネームバリューがないわけではないと思うのですが、ターゲットの層が難しい印象があるんですよね…

実際いずれも集客には苦戦している印象があります。

 

凄い好きな読み手の層は舞台よりアニメや映画に行ってしまうんだろうし、原作付き舞台が好きな層が見るにはもう少し少年誌的なハラハラドキドキを求めている気がするので少し観ていると物足りないと思ってしまうかもしれない。

 

ただ、「さよならソルシエ」も今回の「四月は君の嘘」繊細に丁寧に作りこまれて心にじんわりと染み渡るような叙情的な舞台です。普段舞台を観る方も、逆に余り観ない方も、観ることによって別の感覚が生まれる…そんな作品だと思います。

 

大きいハコでなくて構わないので、こういった丁寧で叙情的な作品の舞台化は今後も様々な作品で観てみたいな…と思うのでした。f:id:bonbonnikunikuoniku:20170830233601j:image