舞台「オブセッション」を観てきた話

生でドラマを観ているような舞台。

 

標題の通りですが、『オブセッション』観てきました。

https://toei-stage.jp/obsession/#story

 

 いや〜。久々に面白い舞台を観たな! と言うのが率直な感想です。舞台と言うより生でテレビドラマを観ていた感覚と言う方が近いかも(決して悪い意味ではありません)3人芝居って役者が少ない分内容やキャラクターの濃度が濃くなると思うのですが話のテンポ感も良く、出演者の赤澤燈くん・本田礼生くん・大内厚雄さんのそれぞれの役者としてのキャラクターの良さが存分に楽しめる作品だと思います。

 脚本はあの一斉を風靡した『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』を始めとして『家政夫のミタゾノ』『婚姻届に判を捺しただけですが』などテレビドラマの脚本を多く手がけているおかざきさとこさん。ちなみに私は今挙げた作品全部好きだったのでその時点で期待値高(笑)(全部がおかざきさんが手掛けていたわけでは無いですけれどね)先に暗転する部分がテレビドラマのCM前の引きっぽかったり、伏線の貼り方がテレビドラマっぽいと思ったり、先に言ったように"ドラマっぽい舞台"と感じたのはおかざきさんの脚本の力もあるかもしれません。

 

 脚本の大筋としては比較的ありきたりであると思うんですよね。死んだ最愛の彼女が彼女を殺した憎き敵に憑依をする。だから敵を討とうとしたけど彼女の魂が入っているから殺せない……。しかも、その敵討ちに協力してくれる先生と恋人はあからさまに何かありそうな感じで……。また、この"何かありそう"な感じもベタベタで。

「割と読める展開だなー。いや、この話の内容とか伏線とかベタベタなのが面白いんだけど!」

と思いながら観てました。途中までは。

 ラストどんでん返しとまでは言いませんが思わぬ方向に着地してこの話は幕を閉じます。

「えっ?  そういう方向に持っていくんだ!」

と結末を観て感じたのも事実。"コメディ"と銘打ってあり、確かに笑えるところも多々ありますが、決してラストはコメディらしいハッピーエンドではありません。ただ、ハッピーエンドでは無いにしてもこのろくでもないことが溢れる現実の中「愚直に生きること」は決して格好悪いことではなく、「人を信じ、信じられること」には大きな力があるんだな……とある種の救いが垣間見えるラストでした。

 

 

出演俳優さんの徒然感想

 

 さて、ここからは各俳優さんの所感を。

 

三原雄吾役/赤澤燈さん

 事故で最愛の彼女を亡くして加害者に復讐しようとする三原役の赤澤さん。出演作品はいくつも拝見していてとても好きな俳優さんの一人です。そして、同時に内から溢れる陽の主人公オーラと言いますか……凄く「主役っぽい」オーラを持っている役者さんだとずっと思っているんですよね、彼の"燈"と言う名は文字通り体を表しているような気がします。

 三原はそんな赤澤さんにピッタリな役だったと思います。真っ直ぐに人を信じ続ける。自分に不利益があっても決して相手を欺かない。そのお人好しさと真っ直ぐさは観てる我々からすると愚かにすら見える。でも、燈くんが演じるからそれが嘘が無い善良な人間、しいてはヒーローのように映るんだよなあ。彼だからこそ嘘っぽくなく三原が演じられるんだと思います。警察官で正義感が強い設定もそのヒーローっぽさに拍車をかける。 

 これは余談ですが、警察官で真っ直ぐで正義感が強くて、拳銃構える姿が様になってるの……昔どこかで見たよなあ……と思ったのはここだけの話……(笑)

 

曽根崎勇役/本田礼生さん

 三原の最愛の彼女を死に至らしめた事故の加害者であり、同時にその彼女に憑依されてしまう曽根崎役の本田くん。刀剣乱舞コンボイショウで拝見しており、品が良く身体能力が高い人と言うイメージが強かったのですが、今回の一人男女二役は圧巻でした。チンピラっぽくて粗暴な曽根崎と可愛らしくてちょっと天然な三原の彼女。正反対の2役を短いスパンでくるくると演じ分けるその実力たるや……! 女性役の時は声色も少し高めにしてましたが、表情や仕草を男性役の時とガラリと変えていて曽根崎の時は曽根崎に、彼女の時は彼女にしか見えないんですよ。実力あるのは存じてましたが、改めてそれを見せつけられた感じです。

 曽根崎としても心に抱えた闇を垣間見せたり、段々と三原に心を開いて行く過程の見せ方は秀逸でした。難しい役だったと思いますが最後には本田くんに釘付け。

 終演後曽根崎の追いアクスタしたんですが、隣の方も同様だったみたいです。解るぞ!

 

柳役/大内厚雄さん

 三原と三原の彼女の恩師であり、今回の復讐劇の協力者である柳役の大内さん。ベテランらしい安定感のある演技でコミカルな所はとことんコミカルにしりあすな所はとことんシリアスに。大内さんが柳先生の役であったからこそ『オブセッション』と言う舞台がより深みを増して成り立ったんだろうなと思います。やはり若手の俳優さんだけで少人数のお芝居をするとちょっとフワッとした感じになると思うのです。決してそれが悪いと言う訳ではないのですが、ベテランの俳優さんが入ることで話も幅が広がり、演技的にも地に付いた感じに締まる部分もあると思うんですよね。しかも、大内さんの役は話が進むに連れキーパーソンにもなって行き、この役は大内さんが演じて良かったし、この話も結果大内さんがいてこそなんだなあ。と観劇後感じます。

 実力のある俳優3人が魅せる、3人だけしか板に立たないお芝居。決して見て損は無いと思います。

 特に大内さんの振れ幅の広い演技や、ラストシーンの燈くんと本田くんのリンクした演技は圧巻です。

 ご興味あるかたはDVD販売や配信もあるようなので是非。