【ネタバレ感想】メサイア外伝 -極夜 Polar night-

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メサイア外伝 -極夜 Polar night-」

公開おめでとうございます!!

 

実は一足先に暁乃刻のリピーター特典で拝見してきたのですが、メサイアはどこまでいっても容赦ないな…と改めて思った次第です。

 

メディアミックス化されたメサイアプロジェクトの影の主人公と言っても過言では無い三栖・周の物語。シリーズを長く支えてきた2人の極限の状況で紡がれる壮絶な最期で最初の物語。ほぼシリーズ全編を跨いで登場しているキャラクターのある種の決着の話なので、正直ここからメサイアが初見ではちょっと登場人物の把握が難しいかもしれません。

 

メサイアは原作・舞台・映像とそれぞれ共通の世界観でありながらも描く方により、三者三様の印象がありました。舞台の毛利さんと原作の高殿先生はとても容赦無く「えげつない」感じのお話を描かれる印象で、方向性としては良く似ているのですが、(毛利さんは中へ中へ抉ってくる様なえげつなさなのに対し、高殿先生は冷たく突き放した様なえげつなさがあるのです。)映像だけは上手く言えない異なる方向性を感じていたのですが、今回の映画は高殿先生寄りの「えげつない」作品であると同時に原作で散りばめられている高殿円先生のエッセンスを多分に感じた映画でもありました。

 

終焉から始まる新たな未来

 

前作の映画「深紅ノ章」で実の父親である堤貴也を殺害した結果精神的に大きなダメージを負った周と、彼を気遣った三栖が半ば隠居の状態で2人で暮らしている所から物語はスタートします。

新たに志倉から三栖に用意された職場”キンダー”で周を支えるために働き始める三栖。しかし、その矢先に自分の存在が枷になっていると感じた周は三栖の下を去り、三栖の過去を調べるうちに浮き彫りになる周家と三栖の過去との関係。そこに加え新東京史上最悪の爆弾テロに置いてそれぞれが辿り着いた「間宮レポート」の存在を通して、チャーチ・キンダーを巻き込み事態は大きく加速してく…

 

 

私が今回の作品の展開の上で一番恐れていたのは「深紅ノ章」を踏まえて革命の志半ばで周と三栖が一線を退いてしまうこと。そして、万が一彼らが一線を退いてしまった時に彼らの志を継ぐ者がいなくなってしまうのでは無いかということ。

 

こう言ってしまうと言い方は悪いかもしれませんが、革命の志を失ったら彼らの今までしてきたことは、戦ってきたことはなんだったのか。それら全てが無に返されてしまいかねないと思ったのです。

 

 サクラ側の人間で最もこの志に近いのは過去に手を貸した白崎護だと思っているのですが、護は卒業が決定している。そうすると周家の関係者と思われるグエンと会って何らかの働きかけが生じるのか??…などと公開前は考えて居ました。

 

しかし、彼らの選んだ道は安寧の道ではなく革命へと続くイバラの道であり、同時に「究極の平等」の礎として三栖は散っていきました。そして、革命の志はある種最高であり、最悪の形で最もそばにいて、最も三栖の志を理解していた存在である周に受け継がれて行くこととなるのです。

 

実際に三栖と周は共に安寧の道を志すこともあの時できたのかもしれません。正直そちらの方が良かったという人もいると思います。でも、私はこの展開で彼らの志が消えなかったことに哀しみと同時に喜びも感じてしまったのも事実です。

 

周は嶺二と三栖と言う大切な人2人を喪いました。それぞれ志を共にしようとした瞬間に。そして奇しくも「頑張れよ」という同様の最期の一言を残して。今の周を突き動かしているのは彼らの想い。それを実現する為には手段を選ばない強さを周は悲しみの中で手に入れたのだと思います。周家に戻ること、しかも反発していた父に頭を下げることは過去の周では絶対に考えられなかった行為だと思うのです。

 恐らく今後、新たなフィールドで2人の想いを背負って前へ進む周の話も絶対に展開されると確信しているので、その時は今は反目している義理の弟のグエンと並んで共闘する姿が見てみたいです。

 

 

…でも、私は三栖さん絶対生きてると思ってますから!!!

 

メサイアは海に投げ出されると春斗しかり、チェーカーしかり大抵生きてるんです!またひょっこり現れて周と並んでくれる日を信じてます(泣)

 

今作の別の意味でのキーパーソン 御池万夜について思う事

 

試写会に行った際に三栖・周のシーンで号泣して嗚咽が止まらない会場で、重ねて「ハッ」と息を飲む声が聞こえて別の嗚咽が聞こえ始めるシーンがありました。間宮と有賀の邂逅のシーンです。

以前の宵宮のイベントの際に、有賀役の井澤くんが
「何か…詳しくは言えないけど、ぶわあああって感じになります。」とか
万夜役の長江くんが
「有賀の過去に対して万夜が働きかけをします。」とか言っていたのが全て繋がった感じでした。

正直まさかそういう方向の働きかけを万夜がしてくると思っておらず、あの展開は意外ではありましたが、同時にあそこのシーンで有賀と間宮の関係性にもある種の決着が付いたと思っています。

 

有賀と間宮に関しては、私の個人の贔屓と傾倒もあり、今回の映画でだいぶ間宮の過去も埋まるので間宮と有賀にスポットを当て過去シリーズを踏まえたブログを書くつもりでいるので、割愛をしますが、このシーンは併せて”御池 万夜”というキャラクターに関しての今後の布石になって来るような気がしてならないのです。

 

万夜は”照る日の杜”という信仰宗教団体の御神体だったと言う過去があります。でも彼に降霊能力があることを示されたと言うことはお飾りの御神体ではなく、れっきとした御神体に相応しい能力者だったと言う訳です。

正直万夜の能力値はあのシーンでは未知数ですが、”照る日の杜”の信者が謎の死を遂げていたりする関係性も勘繰ってしまいたす。しかし、あの能力を持って御神体をしていたと言うことは恐らく万夜にとってとてつもなく苦しいことだったんだろうと、暁の本編中のスペクターと対峙した時の台詞も加味すると(多分あそこで生ける屍であるスペクターと会話できてたのかもしれませんが。)想像に難くありません。

 

間宮は虚構の団体の広告塔。

万夜は新興宗教御神体

 

共に虚像に近い組織の匣の中に囚われ、他者の掌の上で踊らされていた存在として、恐らく万夜と間宮は立場が似ていたのだとも思います。その結果生きるのが苦しくなってしまった点も。だからこそ間宮は”能力がある”ということ以外でも万夜に縋ったのではないか。だからこそ万夜は間宮に手を貸したのではないか。そして、そんな似た者2人はどんな会話をしていたのか…。万夜はあの傍若無人で世間知らずの幼くも歪んだ性格の陰にどれだけの哀しみと苦しみを秘めているのか。万夜の能力と感情の底知れなさが垣間見え、ここへ万夜を元信者の柚木とメサイアを組んだら関係が深まれば深まるほど苦しくなるのも目に見えてきて、今後の万夜に想いを馳せてしまいました。

 

 散りばめられる原作の高殿円先生のエッセンス

 

結構映画を見ながらニヤリとほくそ笑んだのが要所要所に散りばめられている、舞台であまり明らかにされていない高殿先生の原作の中で出てきた設定の数々でした。原作に加えて、リブート文庫が出た際に期間限定で拝読出来た黒子が主人公のSSの中で明らかになっていた(…と思う)結構マニアックな設定も随所に散りばめられていた印象です。

 

「ポケット」という単語や「カミンスキー」と言う人物名はメサイアの原作の中で繰り返し出てきますし、劇中ハングドマンに投与されていた薬の名前は科学捜査班のDr.ONEこと如月一の名前から来ているのだと思われます。(まだ、Dr.ONEに関しては多分舞台では触れられていませんよね?余談ですが、Dr.TENの名前が天津さんなのしかり科学捜査班の名前はみんな名前に数字か読みが近い名前が入ってるみたいなので、Dr.THREEは三上さんとかかもしれない…と思ってる次第。)

個人的に大変ポイントが高かったのが一嶋係長の立ち居振る舞いです。一嶋係長がスリの名手であると言う描写は原作ではあるのですが、それを映画のストーリーの上で展開させてくると思いませんでしたし、一嶋係長が電話で口汚なく自分のメサイアである神北係長代理を罵倒するシーンは、一嶋係長は余り育ちが良くないけれど、神北係長代理は彼が金持ちのボンボンが行く大学の医学生だった…と言う設定の踏襲が垣間見えて非常に興奮しました。今後もこういった原作とのクロスオーバーが見られるのも楽しみです。

 

終焉の先に広がる新たな謎

 

周が調べた三栖の過去の話は深く掘り下げられず、大分ふんわりしていたので、ここは今後の展開を広げる為の隙間なんだろうな…と思っています。この話を通して周兄弟が活躍することを期待してやみません。

 

また、劇中さらりと投下された悠里淮斗の弟である悠里春斗が生存して北に関係していると言う衝撃の真実。

正直春斗は生きていて恐らく北に噛んでいるだろうとはなんとなく予想していたのですが、護と淮斗の卒業に絡んでくると思っていたのでこのタイミング明かされるのは意外でした。今後春斗もまたチャーチを脅かす存在になってくるのか…

 

極夜の闇の先に広がる世界にまた私たちは翻弄されていくのでしょう。それがメサイアの醍醐味。登場人物達と共に哀しみと絶望を抱えながらまたメサイアの世界に浸っていきたいと思います。