ロックミュージカル『MARS RED』を観た話

主演:太田基裕
出演:山本一慶! KIMERU! 糸川耀士郎! 中村誠治郎! 平野良
振付:良知真次
脚本・ 演出:西田大輔
正直この座組を見たとき
何だこの強さは!!!
と実力派のフルコースにテンションが上がりました。特に出演ではなく振付に良知さんの名前を見つけた時の衝撃よ。
 ちょっと個人的には脚本にやや物申したい部分はあれど、設定や俳優さんが大変魅力的で全体的には及第点の面白い舞台だったかなと思います。

以下公式サイトよりあらすじの抜粋になります。
「時は大正十二年。第一次世界大戦後、近代化する日本。
政府陸軍・栗栖秀太郎は、出征先のシベリアでヴァンパイアに噛まれ、
自らも”感染”しヴァンパイアとなってしまう。
帰国後、ヴァンパイアを中心に創設された「第十六特務隊」(通称:零機関)に所属することになった栗栖は、
前田義信、スワ、山上徳一、タケウチと共に、彷徨えるヴァンパイア達を勧誘または捕縛する任務にあたるのだった。

新しく仲間となったナンバの計画により、零機関の運命は思わぬ方向に動き始める。
一方、栗栖の帰りを待つ幼馴染の白瀬葵は、突然届いた死亡通知を信じられず自ら軍部を調べ始める。

もう人としては生きられない。
ヴァンパイアと人間の間で葛藤する栗栖がたどり着いた答えとは―――」
(ロックミュージカル『MARS RED』https://worldcode.co.jp/marsred_musical/)


 大正浪漫・軍服・ヴァンパイア・闇に潜み闇に生きる裏組織・互いに想いながらも結ばれない恋……ヲタのおそらく好きであろう要素がこれでもかと言うくらい盛り盛りに盛られている設定。萌え設定のフルコースですね!!! 少なくとも私は好きです!!!


 ただ、続きがある前提なのか不明ですが、風呂敷広げ過ぎて畳めなかった感は非常にあります。キャラクター出すだけ出しといて大した掘り下げも無かったので割と色々「で、それどうなった?」みたいな部分も多かったのが気になりました。
 原作未履修で申し訳ないのですが、キメ様と一慶さんは多分舞台オリジナルキャラなんでしょうが(違っていたらすいません)二人共重要キャラと匂わせておいてさして掘り下げや踏み込みが無いので凄く消化不良で中途半端。特にラスボスの一慶さんに関しては山場のために追加されたんだろうなと言う感じではあるのですが、後半からの参戦で突然出てきて特に何も成し遂げずあっさり死ぬので、重要なキャラの筈なのに当馬感が半端ないのです。それならば前半から出して行動や本人の過去を掘り下げていって、志の中で死んでほしかったなと。KIMERUさんに関しても凄い実力の何かありそうな凄いキャラと匂わせておいて特に何もないのでこちらも消化不良感が半端ない。組織の概要や各キャラの話、来栖と葵のエピソードにラスボスとの対峙まで描くとそうなってしまうのかもしれませんが、各々のエピソードが比較的独立しているので、かなり話が散漫になってしまっていた印象を受けました。山場は何度もあるのですが結局一番何を見せたかったのか解りづらいのです。個人的にはもう少しエピソードとキャラクターを絞って深く掘り下げて欲しかったですね。


 俳優さんに関しては本当に皆さん素晴らしかったです。先にも書きましたがこの舞台とにかく座組が私の好みでそれだけでもめちゃくちゃポイントが高い。皆歌と演技が上手い! 最高!
主演の太田さんの凛とした空気感と滲み出る真面目で柔らかいオーラが品行方正はな来栖に本当にぴったりで。はまり役だなあと。
 対してラスボス一慶さんは、腹に一物抱えて狂気が皮被ってそうな役がこれまたぴったりで。時々見せる獣のような瞳が真っ直ぐな太田さんの瞳や対極の醸し出す雰囲気で二人の対峙のシーンは大変見ごたえありました。あと、一慶さん殺陣がめちゃくちゃ早い。凄く動ける。

 脇を固める誠治郎さんや平野さん、柳瀬さんも主演級の実力派の方々ばかり。若手の糸川さんもとても華があります。そんな豪華な俳優陣が御本人も俳優として活躍している良知さんの振り付けで歌い踊ると言うのが何とも言えない感慨深さがあります。特に『幕末Rock』で共演した太田さんやKIMERUさんが良知さんの振り付けでロックミュージカルをすると言うのが胸が熱いです。

 脚本については何だかんだと書いてしまいましたが、見ごたえもあるし、世界観にはすっと没入できたので、エンターテインメントとしては良く出来た面白い作品だと思います。
 是非メインメンバーの座組を変えずに続編に期待したいところです。